居ながら工事による賃貸マンションの再生
旧耐震基準の建物が抱える問題を解決し、改修のプロトタイプとなるべく、既存建物を再生したプロジェクトである。
日本の都市には旧耐震基準の建物が数多く残されている。これら建物の改修は、既存不適格への現行法遡及に伴う高額な費用と、築古物件への銀行融資の困難さの二重の課題に阻まれている。本計画は、この現状を打破し、既存ストック活用の促進に資する再生モデルである。
その主な特徴と成果は以下の3つである
①居ながらの耐震補強と性能確保: 入居者が住みながら耐震補強工事を実施し、Is値0.6以上の耐震性能を実現。これにより、住環境を維持しつつ安全性を確保した。
②法的・経済的障壁の克服: 新宿区民間初の耐震改修促進法の認定を取得し、既存不適格を維持しながら増築確認申請と検査済証の再取得。この結果、改修コストを抑制しつつ、築古建物の資産価値を向上させ、比較的長期な融資が実現した。
③SDGs貢献と維持管理: 廃棄予定だった既存外壁タイルを、施主、施工者、設計者の協働によるDIY塗装で再活用。単なる材料循環に留まらず、再生過程への参画を通じて建物への愛着を深め、将来的に専門業者に頼らないセルフ維持管理を可能にすることで、建物の長寿命化を図った。
第42回住まいのリフォームコンクール 住宅金融支援機構理事長賞受賞
2025年度グッドデザイン賞受賞